ロックな象がん師
肥後象がんのアーティスト、津崎洋子さんの作品を撮影するようになってから
もう10年以上経つと思う。
肥後象がんは細川忠興の時代から始まった日本刀のつばに細工する肥後の武士の
お洒落が伝統工芸になったもので、象がんの分野では唯一、国の伝統的工芸品
の指定を受けている。
津崎さんはいつもふいに電話をかけてきては作品を撮ってほしいと言い、
持ち込んだ数点の作品はほとんどおまかせで撮影する。
撮影が終わるとそそくさと帰り、これといった交流もなく、それでも半年ほど
経つとまた電話がなる。そうやって10年以上も縁が続いている。
そもそもどうやって知り合ったのかさえ記憶にないけどウマが合うのだろうか。
私も津崎さんと話をするのが好きで、ご本人はといえばウィットにとんでいて
さばさばしてとても気持ちのいい方。
作品は象がんのカテゴリーを超えてアートでどこかロックだ。
津崎さんの性格がそのまま出たパワフルな作品は見ていてすかっとする。
はやりロックなんだ、この人は。
自分もいくつになってもそうありたい。人生の先輩としても尊敬します。
だって、津崎洋子さんはもう73才なんだもん。かっこよすぎだよ。
なんと肥後象がんでスカルリング!なんてこったい。
スカルは金無垢製だそうだ。
とにかくその手間は相当なもの。
存外の集中力と情熱、そして自由な発想の持ち主です。
撮影が終わると、「お子さんのクルマですか?って言われるのよ。」と笑いながら
オレンジのゼットで帰っていく。クルマと一緒に津崎さんを撮らせてとお願いしたが
今日は勘弁と言われた。
ふだんは内田裕也みたいに見事な銀髪をロックな髪型にされているが、
今日はおとなしかったからかな。
来週から東京三越で個展だそうで、いつものようにそそくさと、いや
颯爽(さっそう)とスポーツカーで去っていった。