The smell of sky

Photographer。知らない土地と、スタンダードが好き。アート、自然、田舎は心がヒリヒリして落ち着く。最近は400年に1度の大地震を経験して新たな悟りを開く。煩悩がある人間はこんなことがないと気づかない。

赤い大根と五木村

真の勇者が生き抜く場所、五木村

五木の子守歌で知られる雰囲気的には寂し−ぃイメージで、でも川辺川がとっても綺麗な素敵なところ。(こんな書き方でいいのか?)
いや、本当にけっこう好きなんだけど、一度嫁さんに「五木に住むのもいいよね。」って言ったら「イメージが暗いからイヤだ!」と一蹴された。
人吉インターから五木村の道の駅あたりまで車で30分弱。今までに何度も通った道を安心感をもってやってきた。実際このあたりは町も開けている。が、ナビが示す取材先の位置はまだ先。
「いやいや、言っても五木村でしょ。この中心部からせいぜい10分かそこらでしょ。」と、思って、車を川辺川沿いにすいすいと山の奥へ走らせた。
10分ほど走った。そのうちうっすらと雪が山間に張りつき、さらに上ると路面も白くなってくる。両側は鬱蒼(うっそう)と切り立った急な斜面で車がすれ違える道幅ではなくなってきている。民家もいつの間にかまったく見えなくなった。子守歌が似合いすぎる光景だ。「おどま盆〜ぎり盆ぎり、盆からさ〜きゃおらんとーぉ。」と、歌詞が頭をまわる。嫁さんの言う通り、イメージが暗くなってきた。
ナビをちらりと見ると、なんとゴールはまだまだ先を示している。
「こんな山奥に住む人なんているだろうか?ナビが大きく間違っているんじゃなかろか?」と、自分の不安を色んなものにぶつけ始める。
しばらくして切り立った斜面がさっと開けたと思ったら、眼下に大きな雪山がいくつも連なっている。相当標高の高い所に来ているようだ。そして、時折タイヤが大きくスリップし始めた。気がつくと雪は大きな塊となって四方をとり囲んでいる。
「ヤバい。。」冷や汗とともに五感がそう伝えてくる。不安になって取材先に電話をしようと携帯を出すと、圧倒的な圏外!もはや、前に進むしかない。五木の子守歌も頭をかすめぬ程に集中して、猪のように前だけを見て、スリップするタイヤにハンドルをあてながら前進あるのみだ。すると、眼前に180度小さく上に向かって回るカーブが現れた。さらに神経を集中させてゆっくりと回り込むと急角度、急斜面の登り坂全面に厚い氷と化した雪が張りついていた。
「断念!」
この氷の上に車を置いたら、ブレーキを引いて停車しても重さで車が崖に向かって滑り落ちていくだろう。そう容易に想像がつくほどトリッキーで難易度の高いセクションだった。
狭い山道のカーブの途中で右往左往しながらUターンして下ることにした。降りるときは登るときの数倍注意が必要だ。場合によってはブレーキもハンドルもきかないかもしれないからだ。肩こり持ちの人がここを通ったら、きっと帰りには首が回らなくなるだろう。気をつけよう。
そうやってすんげー苦労して出会ったのが、写真の「赤大根」。これ以上の苦労を書くとまた肩がこるのでもうやめておく。芯まで赤く綺麗な大根は数々の苦労を乗り越えたものしか見ることができないのだ。
ただ、それを伝えたかったのだ。

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