The smell of sky

Photographer。知らない土地と、スタンダードが好き。アート、自然、田舎は心がヒリヒリして落ち着く。最近は400年に1度の大地震を経験して新たな悟りを開く。煩悩がある人間はこんなことがないと気づかない。

高感度

写真を始めた23才あたりから、カメラを持っていない日などまずない。「あっ」と思った瞬間にまともなカメラがない時の後悔を思えば、少々なら重くても持ち歩いていたいのです。しかし最近はデジタルカメラを持つことも多くなってしまいました。メリットは高感度でも綺麗に写るから暗い条件に強い。この性能ばかりはフィルムは及ばない。さて、それ以外のメリットは?実は僕にとってそれほどない。

フィルムとデジタル、どちらが画質が綺麗?科学者的な意見ならやっぱりデジタルでしょうか。でも、良い写真が写るのはどっちと言われたら決してデジタルではない。もちろんフィルムの方が写るとも言いませんが。ただ、僕にとって、もしくは本気で作品を撮る人にとってなら、フィルムに1票!、と言いたくなります。
一番の理由はやっぱりファインダーでしょうね。本来カメラのファインダーはとてもお金をかけられて作られています。一眼レフでもレンジファインダーでもとにかくファインダーは命。デジタルと違って現場でプレビューできない分、撮影した瞬間の「撮れた」という手応えをファインダーを通して「感じる」ことが大切だからです。

この「感じる」が写真にはとても重要だと僕は思います。絵のようににじっくりと物作りをするのでなく、被写体を一瞬で捉える写真にとって、ライブで感じる最高感度の受信機の性能を持ち得ているかはフォトグラファーにとって生命線だと言えます。本来持っている動物的感度や、例えば思春期から20才くらいまでの感度を、写真専用に研ぎ澄ませて脳内に組み込むようなものでしょうか。

この感度を磨くのにデジタルは苦労するように思えてなりません。プレビューすることで視覚情報で確認できてしまうので、感度より理屈で絵を考えてしまうし、何度も撮り直しがきくことで、「当たるまで撮ればいい」になってしまいがちです。そういう意味ではデジタルカメラは写真の撮り方を大きく変えた世紀の発明ですね。

ここに書いたことは写真を作品と捉えて撮影する人にしか当てはまらないので、それ以外の人にとってはデジタルの恩恵はたくさんあると思いますし、作品を撮るフォトグラファーでも心の最高感度を持ってデジタルを駆使する人も多くいます。しかし、このデジタル全盛において、写真作家の多くがまだフィルムでしか撮らない現状は、決してノスタルジーに浸っているのではなく、必要性を持って使用していることには間違いありません。

デジタルの感度をとるか、心の感度か。
デジタルはいずれにしても人を悩ませてくれます。

 


f:id:graphes:20140616122339j:plain最近の愛機はマミヤ6。僕の作品用中判カメラはこれとローライフレックスで決まり。撮れた時の手応えが半端ないです。


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以前、フィレンツェで撮影した作品(35mm)。こんな写りがデジタルにはないのです。
僕が写せないだけ?