The smell of sky

Photographer。知らない土地と、スタンダードが好き。アート、自然、田舎は心がヒリヒリして落ち着く。最近は400年に1度の大地震を経験して新たな悟りを開く。煩悩がある人間はこんなことがないと気づかない。

こぼれ話

4年前、夕食を食べにあるレストランに毎日通っていた。

人通りの少ない路地にポツンとある地味なお店。

なんとなく落ち着き、料理が美味しい。

そこにはフィレンツェに来てまだ半年という日本人の女性が働いていて

お店全体が気軽さ、というか家のような安堵感に包まれていたというのが

毎日通っていた理由だろう。

まだいるかなぁ。。

行く前からなんとなく思い出していた。

着いて3日目、同行のライターと意見が一致し、顔を出す。

まるで4年も経ったとは思えないほど、

なにも変わらず同じ顔、同じ空気がそこにあった。

知り合いではなかったけれど、同じ日本という故郷を持つ人が

変わらず遠いフィレンツェで頑張っていることになにか嬉しくなった。

久しぶりにあった女性(典子)と話が盛り上がるにつれて

このお店がまた非常に興味深いことを知る。

レストランの名前は「リノ」。

オーナーシェフの名前そのまま。

世界的指揮者である小澤征爾さんがお友達であり

何かに付け、ここに食べに来るという。

実はリノはフィレンツェ料理協会の元会長でもありトスカーナ州

会長も推薦されたが断っている。東京やニューヨークでも実業家からの

リクエストで出店計画のオファーがあったがそれも受けない。

「家族のもとは離れられない」が、理由である。

決して「気まま」を気取っているのではなく

自分の店で「真心をもてなす」のが信条のようだ。

ただの客として来た我らに、まるでファミリーのように

こころを正面に置いて接するリノに私は喜びと感動を覚えた。

いかにもイタリアらしい「歓喜!」を与え、教えてくれたのだ。

結局、その翌日も通ったが、こんなことなら初日から通いつめれば

よかったと後悔するほど身も心も暖めてくれるお店だった。

オーダーも聞かず「俺に任せろ!」と言って

美味い料理とジョークを幸せいっぱいに与えてくれるリノは

紛れもなく世界最高の料理人である。

親子ように楽しく、仲良く働く、リノと典子にきっとまた会いにいきます。

フィレンツェに行く理由はもはやそれだけでいいのだ。

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